こころの病気の例

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/の後の方の名前は、DSM5という新しい診断基準での名称です。
これらのもの以外にも、いろいろ病気はあります。ご遠慮なくおたずねください。

気分にかかわるもの

①うつ病
気分が落ち込み、やる気がなくなり、悲しみが増すことは、多くの方々が一度は経験されます。それが長引き、気の持ちようでは解決せず、仕事にいけないとか家事ができないといったように、日常の生活に支障をきたしている場合、うつ病の可能性があります。なお、気持ちの問題以前に、眠れない、食欲がない、疲れる、あちこちが痛いといった身体の症状が目立つ場合があり、それがうつ病だと気づくのが遅れることがあります。また、典型的でないうつ病もあります。治療に際し抗うつ薬が有効で、それが一定の作用を発揮してきた頃に、認知療法・行動療法をしていただくとよい場合があります。

②躁うつ病/双極性障害
最初にうつ状態で来られる方のなかには、それまでに気分の異常な高揚感や、過剰な活動を経験されていた方がおられます。明らかに躁の状態であれば、家庭や仕事で支障があって気づかれることがありますが、うつ病と思われていても、軽くて一時的だが躁状態があったという場合もあります。そのようなときには、気分の安定を図るためのお薬を使用します。

③適応障害
職場や学校などの環境が、他の人は気にしていなくても、その人にとっては大変辛い、ストレス要因となることがあります。過重労働や不慣れな部署への異動、同僚や上司との人間関係の問題で出勤が辛くなったり、学校でいじめにあって不登校状態に陥ったりしたときもその例です。うつ病にみられる症状があることが多いのですが、環境が変わらないと、抗うつ薬だけでは十分作用がありません。明らかなハラスメントであれば、職場の対応が望まれますが、患者さんには、リラックスする練習や、認知療法に基づく言いたいことをいう練習をしていただくこともあります。

不安障害/不安症にかかわるもの

①パニック障害/パニック症
突然動悸やめまい、息苦しさやふわふわ感、脳梗塞かと思われるような手のしびれなどを感じる方がいます。なかには、病院を救急受診し、心電図などの検査をしても異常がみつからず、心療内科にいくように言われた方もいます。よく起こる場所が、電車内やエレベーターなどで、昔は“閉所恐怖症”、“高所恐怖症”といわれたものです。脳内の緊張を感知する部分の過剰な反応が原因です。抗うつ薬などのお薬と認知・行動療法などが有効とされています。

②社交不安障害/社交不安症
大勢の人のなかにいたり、人前で話したりすることに緊張し、顔が赤くなり汗をかいたり、パニック障害と同様に動悸やめまいなどが起こる方がいます。昔は“対人恐怖症”といわれたもので、場所というより人がいる場面で起きます。原因も治療法もパニック障害と同様で、お薬と認知・行動療法が有効ですが、とくに、リラックスして場面に対応する練習に重点がおかれます。

③強迫性障害/強迫症
家を出るとき、鍵をちゃんとかけたか気になり、何度も確認する方がいます。また、手を洗えているか気になり、何分も洗う方がいます。このように、自分でもおかしい考えとわかっていながら、何かが気になってしまうという強迫観念があり、それを抑えるために、鍵の確認や手洗いなどの行為を続けることがあります。これも同様の治療を行いますが、強迫行為を意識して抑える行動療法を、繰り返し続けることが必要です。なお、強迫性障害は、最近は不安障害から独立したものであるとも考えられています。

発達障害/神経発達症群にかかわるもの
①注意欠陥多動性障害/注意欠如・多動症
仕事や勉強に頑張っているのにどうしてもできないとか、整理整頓やかたづけが苦手な方がいます。二つ以上のことを同時に並行して行うことができない場合が多く、社会生活を営むのに支障が強いとき、ADHDといわれることがあります。子供の頃からのお話をよく聞き、いくつかの知的な面の検査をしてから診断し、お薬を出すことがあります。

②アスペルガ―障害/自閉スペクトラム症
その場にそぐわない発言をし、他の人の気持ちがわからず失礼なことを言い、空気が読めないと言われたりする人がいます。得意な分野と興味のない分野の差がはっきりしています。暑さ寒さなどの感覚に過敏です。少なくない人が持つ特徴ですが、その程度が強く、社会生活を営むのに支障が強いときに診断され、対応を考えたほうがいい場合があります。

③軽度知的障害/知的発達症
通常学級を卒業された方のなかでも、勉強があまりできなかった、仕事をなかなか覚えられないといったという方がいます。頑張ればできそうで、でも難しいこともあります。最近は、単純な作業をこつこつすることで評価される仕事が少なくなり、いろいろと気を使い、考えを働かせないといけない仕事が増えています。知的な面の検査をしてから判断し、対応を考えていきます。

その他 ①不眠症/睡眠・覚醒症候群
受診される方がいわれる症状で、よく眠れないということは、多いものです。細かく内容をお聞きすると、寝つきが悪い、夜中や早朝に目が覚める、ぐっすり眠れない、昼夜の睡眠リズムが乱れている等に分類されます。そして背景として、環境や生活習慣、ストレスから来るうつ病もある場合が少なくありません。また身体の原因として、睡眠時無呼吸症候群や、いわゆるむずむず脚症候群がある場合もあります。ですから、単に睡眠導入薬をお出しすることではなく、背景や原因を考えた対応を心がけています。

②統合失調症
最初は不眠症だけだったが、その場にいないはずの人の声が空耳のように聞こえ出したり、いつもいじめられていると感じたり、考えがまとまらなくなったりしていきます。そして周りの人から見て、理解困難なことをいわれます。昔は精神分裂病といわれ、長く病院に入院するものというイメージがありました。しかし最近は、早期発見していいお薬をのめば、普通に生活を送れるようになりました。それでも、お薬をご自分の判断でやめないことが大事です。なお、周りの人から見て理解できなくはないが、被害妄想的な話をずっと言われるタイプもあります。

③認知症
高齢化社会の進展にともない、認知症をもつ方々がふえてきました。物忘れが徐々に多くなったりふらふら徘徊されたりして、あるときご家族が気づかれる場合が多いのですが、他にもいろいろなタイプがあります。どうしたらいいかわからなくなったり、意欲がなくなったり、気分や性格が変わったようになって行動の変化が著しくなったりする場合、パーキンソン障害的な症状があり、かつ変なものが見える場合、などがあります。よくお話を聞き、他の病・医院での画像検査をすることも必要です。また、今のところ程度が軽いものでも、今後のために考えておいた方がいい場合もあります。

④摂食障害
最初はダイエットのつもりで食事制限をしたが、いつの間にかそれ自体が目的になって、体重が減ってもやめられないという拒食症の方がいます。他方、ストレスに対する気晴らしとしてはじめたむちゃ食いを、常にしてしまうという過食症の方もいます。特効薬はありません。患者さん自ら、治りたいという意思をもっていれば、そのお手伝いをします。そして容易ではないことを、ご理解ください。なお、摂食障害を、習慣化してしまった食行動におぼれてしまい、自分ではどうしようもなくなった状態ととらえる見方があり、嗜癖(しへき、英語ではaddiction)といいます。アルコールや違法薬物への依存もそうです。これらには、専門医療機関をご紹介する場合があります。