成長することについての話

春は、多くの若い人たちが学校を卒業し、就職する季節です。学生時代に、勉強、課外活動、またアルバイトで、責任ある役割をしたといっても、社会人になって任される仕事で生じる責任はずっと大きく、それをこなしていくことで、自身が成長していきます。もっとも、学生時代の経験での成長も、その土台をかたちづくります。

在学中所属していた運動部のOBのある先生から聞いた話です。医者になってしんどいことは多々あったが、クラブの練習ほどきついものはなく、これを乗り越えたから自信になった、だから皆さんも頑張ってほしいと。当時は、ほんとかな、と思っていました。確かにつらい経験でしたが、卒業後の勉強や仕事でもっと辛いことは次々とおこりました。OBの先生もご経験済みでしょう。やはり後輩へのリップサービスだったのかなと、長らく思っていました。

なぜ、学生時代のクラブの練習ほどきついものはなかったと言われたのでしょう。最近考えるのですが、客観的にはそれほどきついとはいえない練習ですが、当時の自分にとってはとてもきつかった、高い山のようなものだったのでしょう。が、ある時点で自分の能力の限界に挑戦して何事かなしたなら自信がつく(それは“一皮むけた”ということです)、そして能力が少し伸びるから、自分にとっての限界水準があがっていく、そして次にもっと負荷の強い課題がきても、自信を持ってこなせるようになるということでしょう。

ここから、高い水準のことを成し遂げることは、一足飛びにはできないことがわかります。低い水準のことから始めて少しずつ能力を高めていくこと、いわば一歩一歩成長していくことで、後になって高い水準のことを成し遂げられるようになるのです。つまり、そのときどきの時点で、たいしたことがないと感じても、手抜きをせず、力を尽くすことが、能力を伸ばすことにつながるのです。

このテーマは一話で終わりません。続きをまた書くことにします。