電車の車内で

電車の座席は、窓に沿って横に長いロングシートと、進行方向に向かって2人で座るクロスシートがあります。クロスシートの窓側、とくに4人が対面するボックス型クロスシートの窓側の座席が空いていることがあります。先に座った乗客が、窓際でなく通路沿いに座られるからです。昔は、乗客は先に窓側に詰めて座り、後の客が通路側に座っていたような気がします。しかし最近は通路側から先に埋まることが多く、とくに4人対面シートでは、向かい合う客の足の間を通るのに抵抗があるようで、窓側が空いていることが少なくないのです。ではなぜ、通路側に座る人が増えたのでしょう。

窓側なら外を眺められます。特急列車などふだん乗らない電車なら、窓側から景色を見たい、でも毎日の通勤電車では、外の景色などもう見飽きたし、降車時に早く降りたいから、通路側に座りたいかもしれません。終点のターミナルでなく、途中で降りるときもありますし、窓側だと奥に閉じ込められる感じがするし、降車時に隣りの客の足の間を通るのが嫌だと思うかもしれません。窓側の席が空いていても、通路側にいる人がちょっとした壁になり、座りたい人が諦めるかもしれません。昔なら“奥に詰めてください”と客が言ったものですが、今は私も言えません。うがった見方をすると、意図せざるかたちで座席を独り占めできそうです。

同様に、朝夕の混雑した通勤電車では、扉付近に立ち止まる客が多く、駅の放送でも奥に詰めて下さいと言っています。同様に、早く降りたいということでしょうか。途中の駅で降りるとき、混んでいれば、扉付近にいないと声を上げて道を空けてもらわないと降りられない、それが嫌だということかもしれません。閉所恐怖の症状があるパニック障害を持つ方には、電車に乗れない、乗れても窓のある扉付近でないとだめだという方もいるかもしれません。なお私は、外の風景を見ていたいほうで、あえて最後の頃に乗車して扉付近にいたり、窓際の席が空いていたら、通路側の席の人の脚をまたいで座ります。混んでいても座りたいもう一つの理由は、変な冤罪に巻き込まれたくないためです(苦笑)。

お年よりや障害者、妊婦さんなどの優先座席については、書くのを少しためらわれます。昔は、優先座席は空けておくもの、という雰囲気がありました。しかし、空いていれば皆が座りだし、今では中高年が前にいるのに、高校生が堂々と足を広げて座っていることもあり、残念なことです。寝ているときは、疲れているのかもしれませんが。しかし優先座席で横に鞄を置いているときは、さすがにやめさせるべく、いいですかと言って自分が座ります。自分の頭髪の色は、もう老人に近いかもしれません。そしてもし前に、実際の御老人など、優先座席に座るべき方が来られたら、譲りますというそぶりは見せず、少したって、その客を見ず、さりげなく降車するから立ったというふりをして席を譲ります。